豆知識1 常陸国風土記

畿内七道諸国の郡(こおり)・郷(さと)の名称は、好い漢字で表記せよ。郡内に産出する銀・銅・彩色(染料と絵具の材料)・植物・鳥・獣・魚・虫等の物は、その一つ一つの種類を記録し、また土地が肥沃か否か、山・川・原・野の名称の由来、また古老が伝承している古い話や変わった事がらなどは、史籍に載せて報告せよ。

東洋文庫 [457] 続日本紀 1 口語訳 直木孝次郎ほか

 これは和銅 6 年(713 年) 5 月 2 日づけで発せられた「風土記」編纂の宣明(命令)である。中央が地方に、郡・郷の名称を好い漢字で表記すること、並びにそれぞれの国情と地誌について報告することを求めている。畿内七道諸国とは、「畿内」(大和、山城、河内、摂津の「四畿」、のちに和泉が設置され「五畿」となる)と「七道」(東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道)をいう。

 これに対して地方から提出された「解(げ)」(報告書)が後年「風土記」と呼ばれるものであるが、現存するのは「出雲国」(島根県)、「常陸国」(茨城県)、「播磨国」(兵庫県)、「豊後国」(大分県)、「肥前国」(佐賀・長崎県)の 5 つであり、「出雲国」は完全な形であるが、他は省略や脱落がある。

「常陸国風土記」は 718 年(養老 2)までの筆録をもとに 722、723 年ごろに完成したものと推定されている。 11 郡中 9 郡の記事が残っており、総記、新治郡、筑波郡、信太郡、茨城郡、行方郡、香島郡、那賀郡、久慈郡、多珂郡から構成され、総記と行方郡のほかは省略部分がある。求めに応じ地勢、物産、地名説話、伝説、歌などが書かれており、当時の状況を知るための重要な資料であるとともに、文学的価値も高い。

(更新 2023/08/27)

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