
「古代史調査ナビ」と名づけた同時進行ブログを書いてきた。いろいろなツールを使うことで、一筋縄ではいかない「古代史」を解き明かそうというのが狙いである。とっかかりはスムーズに進んだように見えたが、簡単に終わるはずの「古墳GISデータの集め方」でなんと7回も費やしてしまった。AIを使い始めたところ、そのウソ(ハルシネーション)に悩まされ、ついにはいろいろなモデルの比較検討実験までやることになった。しかしそのおかげで、AIの使い方に慣れてきたし、興味を持っていたNotebookLMの手応えもつかめた。ということで、次のステップに移ろう!
1.岡山県の埋蔵文化財CSVファイルから古墳を抽出
この一連のブログのテーマは「GISを使う」である。GIS(Geo Information System)とは、位置座標(緯度・経度)にさまざまな情報(属性データ)を紐付けし、これを地図上に表示させて可視化や分析を行うシステムのことである。「古墳」の場合だと、その名前・形状(前方後円墳、円墳など)・大きさ(墳丘長)・時代・出土品などの情報を位置座標に結びつける。したがって、古墳ごとに位置とこれらの属性データをまとめた一覧表が必要となる。
さて、第1回で岡山県の埋蔵文化財のShapeファイルを入手し、これを第2回でCSVファイルに変換した。その中身を見てみよう。左から「遺跡名」「フリガナ」「所在地」「代表的な種別」「詳細な種別」「主な時代」「主な出土品」「出土品保存場所」「遺物の残存状況」「遺跡概要1」「遺跡概要2」「備考」「主な文献1」~「主な文献5」「X」「Y」が順に並んでいる。
「代表的な種別」には、「横穴墓」「貝塚」「官衙」「古墳」「製鉄遺跡」「窯跡」などの文字が並んでいる。「古墳」も「古墳・集落・製鉄」といった具合に他と組み合わされていろいろあるようだ。ところが、「詳細な種別」まで見ても、「前方後円墳」「円墳」といった古墳の形状を表す言葉がない。つぎに「時代」のところを見ると「旧石器」「縄文」「弥生」「古墳」「飛鳥白鳳」「奈良」…となっていて、古墳は「古墳時代」一本にまとめられてしまっているようだ。
この表のデータ数は全部でなんと22,579件!まずはここから古墳を抽出させなければならない。CSVをエクセルに読み込んで、「主な種別」にフィルタをかけて古墳関係のものを抽出する。その数、なんと11,930基。古墳が多すぎるのである!とりあえず、エクセルにフリガナ、所在地、X、Yをコピーし、このタブに「岡山県」と名前をつけた。
2.他のデータベースと照合する
さて、どうしたものか? ひらめいたのは他のデータベースで「岡山県」を検索し、その古墳情報と合わせることである。
- 文化総覧WebGISで「岡山県」「古墳時代」主な遺物=「前方後円墳」で絞ってみると、184件。名前と所在地(住所)が表示されるが、それ以上の情報は表示されている古墳名をクリックしていかなければならない。ちなみに、「前方後方墳」は19件、「方墳」は324件、「円墳」は3,315件ある。
- 全国古墳データベースで「岡山県」で検索すると、ヒットは213件、形状と墳丘長のデータが表形式になっている。
- 前方後円墳検索では291件、表形式で墳丘長の他に時代という欄があるが「不明」になっていることが多い。
- 古墳マップでは710件(前方後円墳、円墳、方墳などいろいろある)。一覧は表示されるものの残念ながら表にはなっていない。
岡山県のテーブルの11,930基、まずは「前方後円墳」から決めていこう。
どのデータベースを使おうかと考えた結果、前方後円墳が対象でかつ時代まで書いてある「前方後円墳検索」の 291基にしようと決めた。エクセルの「岡山県」のタブの隣に、新しいタブを作り、ここに291基のデータをコピペ。このタブに「前方後円墳検索岡山県」と名前をつける。「岡山県」のタブの表の右に「形状」「墳丘長」「時代」の欄を設け、「前方後円墳検索岡山県」の表の古墳名を「岡山県」の表の遺跡名と照合し、一致するところに「前方後円墳検索岡山県」から「形状」「墳丘長」「時代」をコピペ。あとで一致しなかったものが探しやすいように、「前方後円墳検索岡山県」の表に「確認」の欄を設けて「○」を打つようにした。
これを繰り返していく。昔ならマクロを組むところだが、今はMicrosoftのAIアシスタントCopilotがある。AIに作業を指示して実行させれば簡単に作業が終わる!…はずが、上手くいかない! 一致数は160件で55%にすぎない。どうなっているか調べてみた。すると、同じ古墳のはずが、データベースによっても名前が違う。これでは一致しないのは当然だ。さらに、もうひとつ別の問題も浮上してきた。同じ古墳名の古墳がたくさんあるのである。たとえば「丸山古墳」、これが6つの異なる場所にある。これら全部に同じ情報をコピペしているのだ。住所欄まで見て一致するかチェックすればいいのだが、データベースごとに住所の表示方法が異なっている。「岡山県」のテーブルでは表記は短く、例えば倉敷市は単に「倉敷市」となっていて、そのあとの町名番地表記がない。さらに、「前方後円墳検索岡山県」のデータは古く、使われている住所は市町村合併前のものだった。不一致が多いのでつぎのデータベースも検討してみる。
つぎは全国古墳データベース。これもヒット数が少ない。Copilotが数字の入っている古墳をすべてスルーしてしまっていたのだ。原因を調べてみると、岡山県のデータは全角数字を、全国古墳データベースは半角数字を使っていたのだ。数字を半角から全角に変換する。さらに、同じ古墳でも複数の呼び名があるものがあり、これも手作業で一致させて、Copilotに照合作業を依頼する。これで、なんとか196件/213件をコピーできた。
ついでに文化総覧WebGISのデータとも照合させておこう。こちらは、同じ古墳名が使われていることが多いようで、179件/184件と一致率が高い。これに気を良くして、前方後方墳、方墳と作業を行い、最後に残った古墳の形状欄に「円墳等」と記入する。これで、位置データに古墳名・形状までは紐付けさせることができた。ここまで二日がかり。
3.緯度経度が重複しているものを一つにまとめる
さて、この地道な照合作業を続ける中で、ある「奇妙なデータ」の存在に気づいた。「岡山県」の表では、同じ緯度経度のものがたくさんあるのだ。たとえば総社市の「ドンドン山」は1号墳から58号墳まであり、これらがみんな同じ緯度・経度になっている。おそらく、これらは一つのポリゴンの枠の中に包含されていたものと思われる。元のシェープファイルではポリゴンの中にそれぞれの位置も示されていたのだろうが、それをCSVデータに変換する際、代表となる一点のポイントデータに集約されてしまったのではないだろうか。これによって、同じポリゴン内にある古墳がすべて同じ緯度・経度となってしまったのだろう。本格的なGISソフトを使えば区別して表示できるはずだが、今回はこのままいくしかない。しかし、一方で11,930基もデータがあると扱いづらいので、同じ緯度・経度のものは「ドンドン山古墳群」という風にまとめてしまう方がよい。
この作業をCopilotに任せるのは、想像以上に困難だった。なぜなら、以下のような条件をクリアしなければならないのだから。
- 同じ緯度・経度を選び出し、一つを残してあとは消去する
- 名前を「○○古墳群」に書き換える
- ただし、すでに形状を特定した「前方後円墳」などは消さずに残し、「円墳等」のデータだけをまとめる
AIにどう指示すればよいか思いつかず、結局この作業は「人力」で行うことに。ところが、この緯度・経度の重複は予想した以上にたくさんあり、この作業に三日費やすことになってしまった。延々と泥臭い作業を続けた結果、岡山県のテーブルの11,930基は5,954基まで減少した。

4.墳丘長と時代を入力
このあと文化財総覧WebGISの184件について、ウィンドウを表示させて、「墳丘長」と「時代」を入力した。気がついたのは「時代」が単に「古墳時代」のものが多く、より細分化された区分を示していないことだ。単に「古墳時代」となっているものは「不明」と記入することにした。この時代区分については、次回の検討としたい。
ということで、泥臭い作業を延々と続けたのち、なんとか「岡山県古墳リスト」が完成した。この一連の作業、体力と気力をかなり消費した。

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