
前回はマルチモーダル大規模言語モデルGemini の2モデル(Flash, Pro)、「強化版思考モード」のON/OFF、ユーザー自身が指定した資料だけをソースにして、AIが要約や分析を行うツールNotebookLMを用い、10種類の組み合わせケースに対して、「古墳や埋蔵文化財のGISデータの取得方法についてできるだけ多く列挙し、それぞれについて概要とリスクを箇条書きで記述せよ」というプロンプトを与え、その回答結果を比較・評価した。この方法で、非常に多くの「古墳GISデータの取得法」が把握できた。おそらく人力で検索していてはここまで集められなかっただろう。まさにAI使用の威力である。
今回はこの回答結果から「古墳GISデータの取得法の網羅的な一覧表」を作成する。つぎにその内容を私が「人力」で確認し、間違いは追加・訂正し、時にはコメントも加えて最終的な一覧表に仕上げる。そして最後に、NotebookLMを用いて「10ケースのAI回答」をこの「正答」と比較して、「ハルシネーション」の程度を調べてみよう。
GISデータ取得法の概要とリスク・課題の一覧表
一覧表の構成は前回「3.古墳・遺跡GISデータ取得方法の細分化と対応表」のところで使った分類に従っている。まだ抜けはあるかもしれないが、およそ「古墳GISデータの取得法」を網羅的に表現できていると思う。
最初にNotebookLMを用いて、各項目ごとに「10ケースのAI回答」を総合した「概要」「入手先」「リスク・課題」を整理させた。これを元に検証に入ったのだが、最初のものまで示すと長くなるので、ここでは「検証済みの一覧表」のみを示すことにする。なお、検証は筆者の知識・調査能力上の限界があるため、今後もアップデートしていくつもりである。
(1)GISファイル(Shapefile、CSV等)のダウンロード
- 「国の省庁」サイトからダウンロード
- 国土交通省:「国土数値情報」サイトからダウンロード
- 概要: 文化財保護法に基づき指定された「史跡・名勝・天然記念物」のポイントデータや、「世界文化遺産」の構成資産および緩衝地帯のポリゴンデータが、Shapefile、GeoJSON、GML等の形式で無償提供されている。
- 入手先: 国土交通省「国土数値情報ダウンロードサービス」。古墳・埋蔵文化財については「文化財保護法によって指定された文化財」と「都道府県指定文化財」の2つサイトがある。
- リスク・課題: 収録対象は「指定文化財」であり、未指定の膨大な「周知の埋蔵文化財包蔵地」の大部分が網羅されていない。
- 文化庁:「国指定文化財等データベース」からダウンロード
- 概要: 国(文化庁)が指定する史跡等の名称や所在地情報が取得できる。調べたい文化財をキーワード・地域で検索するとリストが作成され、CSVファイルとしてダウンロード可能。この中に緯度・経度データもある。
- 入手先: 文化庁「国指定文化財等データベース」(または国土数値情報経由の連携データ)。
- リスク・課題: 未指定の膨大な「周知の埋蔵文化財包蔵地」の大部分が網羅されていない。
- 国土交通省:「国土数値情報」サイトからダウンロード
- 「自治体」サイトからダウンロード(詳細は「古墳データの集め方(4)」記載)
- 概要:管轄内の「周知の埋蔵文化財包蔵地」や「指定文化財」のポリゴンやポイントデータを提供し、ダウンロードが可能。主な提供形式は、シェープファイル(Shapefile)、GeoJSON、KML、および緯度・経度情報を含むCSVファイル。
- 入手先:各自治体のオープンデータポータルサイト。都道府県単位では北海道・岩手・宮城・山形・茨城・群馬・富山・岐阜・和歌山・岡山・山口・熊本・沖縄が独自のポータルを通じて公開している。
- リスク・課題:①網羅性の欠如と地域格差: 遺跡地図を再利用可能なオープンデータとして公開している自治体は、2026年時点で都道府県単位でも約28%に留まる。公開状況には極めて大きな地域差がある。②仕様・座標系の不統一: 自治体ごとに属性情報のフォーマットや座標系(旧日本測地系、JGD2000、JGD2011等)が異なる。これらを統合する際、座標変換に伴う位置ズレの確認・補正等のデータクレンジング作業が必要となる。③データの正確性と鮮度: 発掘調査による範囲の変更や新規指定がデータに反映されるまでにはタイムラグがある。また、印刷用図面から生成された「引き出し線」など、GIS解析には不要なノイズが混入している場合がある。
- 「国の機関・研究所」サイトからダウンロード
- 概要:奈良文化財研究所、国土地理院、産総研、G空間情報センターが関係する機関だが、いずれも古墳・埋蔵文化財等のGISデータの一括ダウンロードはできない。
- 奈良文化財研究所
- 全国文化財総覧と文化財総覧WebGISを公開。後者は「Web地図」の項に記載。全国文化財総覧では「遺跡報告書」等のPDFをダウンロード可能、また遺跡 (抄録)検索で概要と住所(または所在地)情報を確認でき、報告書の詳細ページには世界測地系の「緯度・経度データ」が記載されている。古墳・埋蔵文化財等のGISファイルのダウンロードはできない。
- 国土地理院
- 古墳・埋蔵文化財等のGISファイルはダウンロードできないが、航空レーザ測量による高精度標高データの整備を進めており、埋蔵文化財の把握に役立つ「基盤地図情報(数値標高モデル[DEM])」及び「点群データ」を提供(→(2)-6, (2)-7参照)。「地理院地図」については「Web地図」の項に記載。
- 産総研
- 地質図等はダウンロード可能だが、古墳・埋蔵文化財等のGISファイルのダウンロードはできない。なお、「奈文研」と共同で、地下空間を含む国土の3次元構造と社会活動の歴史的情報を総合的に記述する全国文化財情報デジタルツインプラットフォームを公開。
- G空間情報センター(統合ポータル)
- 地理空間情報の有効活用と流通を促進するプラットフォームで、ファイルのダウンロードが可能だが、古墳については兵庫県遺跡立体図のみ(都道府県の指定文化財のGeoJSONファイルがダウンロード可)。航空レーザ測量データが入手可能。
- 奈良文化財研究所
- 概要:奈良文化財研究所、国土地理院、産総研、G空間情報センターが関係する機関だが、いずれも古墳・埋蔵文化財等のGISデータの一括ダウンロードはできない。
- 「大学や大学関連研究拠点」のサイトからダウンロード
- 概要:大学の研究室や科学研究費助成事業(科研費)等のプロジェクト成果として、特定の地域や時代、あるいは古墳の形式(前方後円墳など)に特化して構築された高精度なGISデータや3次元計測データが公開・配布されることがある。また、大学の枠を超えオープンデータを推進する研究拠点 CODHでは古墳情報を含む「日本歴史地名体系」のオープン化プロジェクトなどが進められている。
- 入手先:
- 大学の研究室・プロジェクトサイト: 奈良大学文学部文化財学科(大型古墳のGISデータ等)などの事例が挙げられるが、データ自体を公開している例は発見できなかった。奈良女子大学「全国古墳データベース」は「Web地図」の項に記載する。
- 共同利用機関・プラットフォーム: 人文科学オープンデータ共同利用センター(CODH)から平凡社「日本歴史地名体系」の「施設・地点項目データセット」のCSVファイル(オープンデータ)がダウンロードできる。この中に日本全国の2,625件の古墳・古墳群の緯度・経度データが含まれていることを確認。
- リスク・課題:①永続性と更新の停止: プロジェクト関連のデータの公開は、プロジェクト終了に伴いサイトが閉鎖されたり、データの更新が停止したりするリスクがある。②網羅性の限定: 研究テーマに特化しているため、対象とする地域や時代、遺跡種別の網羅性が限定的であり、一般的な埋蔵文化財全体の分析には適さない場合がある。上記CODHのケースでは全国レベルのデータが得られるが、古墳形状や大きさのデータはない。
- 「民間機関・企業」のサイトからダウンロード
- 概要:空間情報プロバイダ等の民間企業は、自治体が発行する遺跡地図(PDFや紙媒体)を独自にデジタル化・集約し、主に不動産・建設業界向けのスクリーニング用データセットとして整備・販売しているとあり、不動産業界向けのデータセットや航空レーザ計測の点群データの販売は確認できたが、古墳・埋蔵文化財に特化したGISデータの販売は確認できなかった。
- 「個人・有志(OSM等)」のサイトからダウンロード
- 概要:世界中の有志(ボランティア)が地図情報を整備するクラウドソーシング型のプロジェクトから、特定のタグ(属性情報)が付与された地物を抽出し、GeoJSON等のGISデータとして取得する。また、研究者がソフトウェア開発およびデータ共有のためのプラットフォームGitHubのリポジトリでデータを公開している事例がある。
- 入手先:①OpenStreetMap (OSM): Overpass API等の抽出ツールを用いることで、特定のタグに合致するデータを取得できる。「”name” ~ “古墳$”」では896件が抽出でき、GeoJSON形式でダウンロードして地理院地図に読み込ませることができた。②GitHubリポジトリ:考古学者の野口淳氏が「東京都登録遺跡の地理空間データ」を公開。油山山麓の古墳群と周辺の遺跡分布GISデータ、陰影起伏図で見る古墳マップ等が公開。
- リスク・課題:①学術的信頼性と正確性の欠如: OSMの場合には専門家による査読や検証を経ていないデータが含まれるため、学術研究の一次資料としての信頼性や正確性は担保されていない。②網羅性に欠ける: 有志の投稿に依存しているため、地域が限定されたり、有名な巨大古墳に限定されるなど網羅性に偏りがある。
- Web地図からのダウンロード
- 概要:Web地図は奈文研の文化総覧WebGISをはじめ、国土地理院の地理院地図(検索欄に例えば「古墳」と入力すれば表示される)や、多くの自治体、大学、有志グループ等で公開されている(その詳細については、「古墳データの集め方(4)」「古墳データの集め方(5)」を参照)。しかし、閲覧を主目的としており、ほんの一部のサイトを除き、生データ(ShapefileやGeoJSON等)の一括・部分ダウンロード機能が解放されていない。
- 自治体等へのファイル請求
- 概要:ウェブ上で一般公開・配布されていない詳細な遺跡位置情報や属性データについて、学術研究等の正当な理由を提示し、行政窓口等に対して直接のデータ提供依頼を行う手法である。
- 入手先:地方自治体の専門窓口: 各自治体の教育委員会(文化財保護課等)や埋蔵文化財センターなど。研究機関: 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所(奈文研)など、一括ダウンロードに申請や制限を設けている機関が該当する。
- リスク・課題:非公開・開示拒否: 個人や目的不明の民間企業への提供は拒否されるケースが多い。(研究目的では本ブログの最後に述べるように十分可能性がある。)
- 購入
- 概要:「5.民間機関・企業のサイトからダウンロード」のところで述べたように一般販売されていない。
(2)(1)以外のGIS情報の入手
- Web地図からの人力によるデータ抽出
- 概要:Webブラウザ上で公開されている遺跡地図や文化財データベースのインタフェースを利用し、特定の遺構を選択・右クリック等して表示される座標値(緯度・経度)や属性情報を、手動でコピー&ペーストしてデータセットを構築する手法である。一括ダウンロード機能が制限されているプラットフォームにおいて、特定の地点や少数の遺構情報をピンポイントで取得する際に用いられる。
- 入手先:「古墳データの集め方(4)」「古墳データの集め方(5)」を参照
- リスク・課題:①作業効率が悪い: 大量のデータを収集するには多大な時間と人的労力が必要となる。②位置情報の精度と誤謬:地図上の位置を目視で参照して取得した代表点は、厳密な遺跡範囲データの中心点とは限らず、現地の確定図面と比較して数メートルから数十メートルのズレを含む可能性がある。
- Web地図へのGISソフト接続・APIを利用したデータ抽出
- 概要:①GISサーバーへの直接接続と②APIによるデータ取得の2つについて検討した。①では、地理院地図にGISソフトを接続し、背景地図等を直接読み込むことは可能だが、属性データについてはいったんダウンロードさせる必要がある。 ② については、OpenStreetMap(OSM)等のプラットフォームが提供するOverpass API等を利用する手法(前述)のようにAPIが公開されていれば可能。
- リスク・課題:つぎのウェブスクレイピング参照。
- Web地図からのスクレイピングによるデータ抽出
- 概要: 特定のウェブサイトやプログラムから、大量の情報を機械的に抽出、取得、収集する技術を指す。Python言語(Selenium, BeautifulSoup, Scrapy等)を用いた自動収集プログラムが用いられる。下記の様にかなりややこしいので実施しない方が無難。
- リスク・課題:スクレイピング自体が法に触れるものではないが、次の3つの法的リスクがある。
- サーバー負荷(偽計業務妨害罪等): 短時間に過度なリクエストを送信し、相手サーバーをダウンさせた場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)や電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)に問われる可能性がある。実例(岡崎市立中央図書館事件)。
- 利用規約違反(債務不履行・不法行為): スクレイピングを禁止しているサイトの利用規約に同意した状態で実施した場合、民事上の責任(損害賠償請求、差止請求等)を負うリスクがある。
- 著作権法上のリスクと制限:
- 複製権の侵害: 古墳の位置を示す「座標(緯度・経度)」や「住所」そのものは、客観的事実(事実情報)の測定結果であり、著作権法上の保護対象(著作物)には該当しない。ただし、それらを集積した「データベース」や、視覚的に表現した「地図」「発掘調査報告書」は著作権が認められる著作物であるため、利用に際しては個別の注意を要する。
- 無断でのコピー(複製)は複製権(著作権法21条)の侵害にあたり、許諾が必要である。
- 以下の例外規定に該当する場合は、許諾なくスクレイピングが可能である。
- (1) 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(30条の4): AIの学習や情報解析(大量の情報からの統計的な解析)に供する場合。
- (2) 情報処理の結果の提供に付随する軽微利用(47条の5): 検索エンジンの表示用データの蓄積や、所在検索サービスでの利用。
- なお、自動取得したデータは、サイト側の構造変化や誤りにより「間違いの山」となるリスクがあるため、人間によるファクトチェックや校正が必須となる。
- 報告書等のデジタルファイルからのWebAPIによる取得
- 概要:たとえば「全国文化財総覧(全国遺跡報告総覧)」 では、報告書詳細ページに「緯度経度(世界測地系・10進数)」が自動生成される項目が設けられているが、一括抽出用の公式APIは提供されていない。
- PDF・紙(報告書・遺跡地図等)からの取得
- 概要:刊行された発掘調査報告書や自治体が配布する遺跡地図(PDF・紙)をソースとして、地理空間情報を再構築する手法。
- 遺跡抄録から作成:遺跡抄録から遺跡名称、時代、種別と中心点の「緯度・経度」(世界測地系、違う場合には変換)を確認し、GISで利用可能な形式(CSV等)の台帳を作成。
- 遺構配置図や地図(ラスタデータ)に地理座標を付与し、ベクタデータとして再構築:デジタル化: 紙図面をスキャナーで読み込むか、歪みの少ない長焦点レンズで写真撮影して画像データを作成。幾何補正: GISソフトを用いて画像上の既知の座標点に実際の座標値を入力、または背景のウェブ地図と同一地点を比定して位置を合わせる。デジタイズ: 補正された画像を背景として、遺構の輪郭(ポリゴン)、線(ライン)、遺物出土地点(ポイント)をマウス等でなぞり、属性情報を付与したベクタデータを作成。
- 入手先:①全国遺跡報告総覧(奈良文化財研究所): 国内最大級の発掘調査報告書デジタルアーカイブであり、PDF形式の報告書や抄録データを無償で取得可能。②地方自治体の教育委員会・埋蔵文化財センター: 自治体のホームページ等でPDF版の「遺跡地図」が公開されているほか、紙媒体の報告書が保管されている。
- リスク・課題:
- 多大な作業コストとヒューマンエラー: 膨大な資料から人力を介してデータ化するため、多大な時間と労力を要し、入力ミス、誤字脱字、トレースのズレといったエラーが避けられない。
- 情報の真正性と精度の劣化:測量機器で取得された電子的な位置情報も、印刷・PDF化の過程で「図面」に加工される際、元の座標値が失われる。紙図面の歪み、スキャン時の歪み、補正用基準点(GCP)の配置により、数メートルの誤差が生じるリスクがある。
- 座標系の不整合: 昭和期等の古い報告書では、旧日本測地系や独自のローカル座標系が採用されていることが多く、現代の世界測地系への正確な変換が困難な場合がある。
- 報告書自体の誤謬: 報告書の抄録に記載された緯度経度自体に、校正ミスや測地系の誤表記が含まれているケースがあり、これらをそのままGIS化するリスクが伴う。また、記載された座標が「遺跡の代表点(重心)」なのか「調査地点の中心」なのか、基準が標準化されていないケースが多い。
- 法的・権利上の制限: 背景地図の著作権や自治体の利用規約により、作成した二次的データの外部公開や配布が制限される場合がある。
- 概要:刊行された発掘調査報告書や自治体が配布する遺跡地図(PDF・紙)をソースとして、地理空間情報を再構築する手法。
- 測量によるGISデータの取得
- 概要:つぎの2つがある。
- ①現地調査(フィールドワーク)による直接取得:RTK-GNSS(高精度衛星測位)、ハンディGPS、ドローンを用いた写真計測(SfM-MVS)、またはiPhone/iPad等に搭載されたLiDARスキャナを活用し、現地の地形、遺構、古墳の墳丘の3次元位置データを直接取得してGISへ入力する手法。
- ②航空レーザ測量(LPデータ)からの抽出:官公庁や自治体が公開している航空レーザ測量データ(DEM:数値標高モデル、DSM:数値表面モデル)を取得し、赤色立体地図や傾斜量図等の地形表現図に加工することで、森林下に隠れた古墳のマウンドや周溝の形状を微地形として抽出・ポリゴン化する。
- 入手先: ①現地調査:調査対象となる現地での直接計測。一部の3Dモデルは「Sketchfab」等の共有プラットフォームや「G空間情報センター」で公開されている。②航空レーザデータ:G空間情報センター、各自治体の配布データ、国土地理院の基盤地図情報(数値標高モデル)など。
- リスク:
- ①現地調査によるリスク:
- 高額な導入・教育コスト: 精密な計測には数百万円単位の機材や解析ソフト、および専門的な知識・訓練が必要
- 環境要因による誤差: 樹木が繁茂する山林など、上空が遮蔽された場所では測位誤差が10m程度発生するリスクがある
- 法的規制と安全面: ドローンの飛行には航空法等の遵守や申請が必須であり、山林調査には滑落等の危険が伴う、データの陳腐化: デジタルデバイスやソフトの進化が速く、数年で機材の入手やファイル形式の対応が困難になる恐れがある。
- ②航空レーザ測量によるリスク:
- 誤認のリスク: 画像上の微地形が人為的な遺構(古墳)なのか、自然の起伏(地滑り跡等)なのかの判別には専門的な知見を要し、誤認のリスクが排除できない
- 解像度の限界: 元データの解像度が低い場合、小規模な遺構を正確に描出できない、がある
- ①現地調査によるリスク:
- 概要:つぎの2つがある。
- 画像・写真からのGISデータの取得
- 概要: 発掘調査報告書や遺跡地図に掲載された図面については、「(2)-5.PDF・紙(報告書・遺跡地図等)からの取得」に記載済み。写真については①ドローンや地上から撮影した多数のデジタル写真から、SfM/MVS技術(フォトグラメトリ)を用いて3次元形状と位置情報を抽出し、GISデータ化する手法、②航空レーザ測量データから作成された「赤色立体地図」や「傾斜量図」等の画像を背景とし、古墳のマウンドや周溝の形状を視覚的に判読してポリゴン化する手法がある。
- 入手先: ①現地調査による直接撮影、②G空間情報センター、自治体の配布データ、国土地理院の基盤地図情報。
- リスク・課題:「(2)-6 測量によるGISデータの取得」参照
(3)データの変換
- ジオコーディング(住所→緯度経度)
- 概要:所在地(住所)や地番などのテキスト情報を、地理空間情報である座標値(緯度・経度)に変換し、GISポイントデータを作成する手法である。
- 入手先:東京大学CSISの「アドレスマッチングサービス」やGoogle Maps API、あるいは「緯度経度地図」等のWebツールを用いて、一括または個別に座標を付加し、CSV形式等でGISに読み込ませる手法が一般的である。
- リスク・課題:①位置精度の限界(代表点問題): 所在地が「〇〇町」など大まかな記載に留まる場合や、山林・旧地番などで変換ツールが正確に特定できない場合、その町の中心点(役場等)に複数の遺跡が重なってプロットされる「代表点の罠」が生じる。②座標系の不整合: 世界測地系と旧日本測地系の混同により、数百メートル単位の位置ズレが発生する恐れがある。③情報の不確実性と網羅性: 市町村合併や住居表示の変更、区画整理により、住所文字列のみでは正確な位置特定が困難な場合がある。また、この手法は住所録が存在する指定文化財等に限定されやすく、住所が不明確な「周知の埋蔵文化財包蔵地」の大部分を網羅するには至らない。④利用規約上の制限: Googleマップ等の商用地図サービスを利用して取得した位置情報は、そのサービスの規約により外部での利用や商用目的の制限を受ける場合がある。
- ファイル変換
- 概要:シェープファイル(Shapefile)、GeoJSON、KML、GMLといった地理空間情報フォーマットを、相互に変換、あるいはExcel等で編集可能なCSV形式に書き出す方法をいう
- 入手先:ツールとしてはQGIS等のGISソフトウェアやmapshaperがある。
- PDF・紙・画像からのCSV作成(デジタイズ・座標付与など)→「(2)-5 PDF・紙(報告書・遺跡地図等)からの取得」に記載
ハルシネーションの検討
NotebookLMに「GISデータ取得法の概要とリスク・課題の一覧表」を読み込ませ、10ケースのAI回答との差異を調べ、誤りの数を算出した。なお、関係する事項の見落としは件数に含めない。
- Case 1:2件
- 「文化財総覧WebGIS」のデータ取得可否:「申請や制限がある場合がある」→「一括ダウンロードはできない」
- 大学研究室によるデータ公開:「高精度なGISデータを公開している場合がある」→「データ自体を公開している例は発見できなかった」
- Case 2:3件
- 「国土数値情報ダウンロードサービス」:地方自治体指定の文化財の大部分は網羅されていない→「都道府県指定文化財」のサイトがある
- 奈文研:「GISデータが公開・提供されるケース」→「古墳・埋蔵文化財等のGISファイルのダウンロードはできない」
- (CODH)等の機関が…「特定の地域・テーマ(例:前方後円墳の3次元計測データ、特定地域の古墳群データベース)に絞ってGIS互換データや位置情報(KML/CSV)を公開」→「平凡社「日本歴史地名体系」の「施設・地点項目データセット」のCSVファイル(オープンデータ)がダウンロードできる。この中に日本全国の2,625件の古墳・古墳群の緯度・経度データが含まれている」
- Case 3:2件
- 「大学の研究室や科学研究費助成事業(科研費)のプロジェクト(例:奈良大学の大型古墳GISデータなど)が、研究成果として独自に構築し、WEB上で公開・配布している古墳や遺跡のGISデータ」→配布はない
- 国土数値情報: 「世界文化遺産」などの国を代表する極めて限定的な文化財のみ→「都道府県指定文化財」のサイトがある
- Case 4:0件 情報の欠落はあっても、誤りは見いだせなかった
- Case 5:3件
- G空間情報センター(G-Spatial Information Center)などの統合ポータルサイトで「埋蔵文化財」「遺跡」と検索して一括取得することも可能→実際に入手できるのは「兵庫県遺跡立体図(GeoJSON)」だけなので、あたかも全国的な遺跡データが一括ダウンロードできるかのような誤解を与えて不適切
- GISデータベンダー(株式会社ゼンリン、ESRIジャパンなど)や、専門のコンサルタント企業が独自に整備したデータセットを購入→「古墳・埋蔵文化財のGISデータの販売は確認できなかった」
- 文化庁「国指定文化財等データベース」:所在地(住所)のテキストリストを取得し、東大CSISの「アドレスマッチングサービス」やGoogle Maps APIなどでGISポイントデータ化→CSVファイルには、あらかじめ「緯度・経度データ」が含まれている
- Case 6:3件
- 奈良文化財研究所(奈文研):「一部API経由でのデータ取得」→「一括抽出用の公式APIは提供されていない」
- 「地理院地図」における注記データなどからデータを抽出できる→「古墳・埋蔵文化財等のGISファイルはダウンロードできない」
- ゼンリンやパスコなどの民間企業からデータセットを購入できる→「古墳・埋蔵文化財のGISデータの販売は確認できなかった」
- Case 7:情報の欠落はあっても、誤りは見いだせなかった
- Case 8:情報の欠落はあっても、誤りは見いだせなかった
- Case 9:1件
- 奈良文化財研究所(奈文研):「一部API経由でのデータ取得」→「一括抽出用の公式APIは提供されていない」
- Case 10:1件
- 国土交通省や国土地理院が提供する「国指定文化財データベース」や「国土数値情報」→国土交通省が提供する「国指定文化財データベース」や「国土数値情報」(国土地理院は関係がない)
Geminiではある程度のハルシネーションが認められた。Pro[強化版思考モードON]のCase5は多くの取得法に言及したが、そのせいもあってか誤りが3と多くなった。NotebookLMは限定した資料がソースなので謝りの件数はぐっと少ないが、それでも驚くべきことにCase 10のように、関係のない「国土地理院」が混入した。「国土地理院」は「国土基本情報」を提供しているが、それとの読み間違いであると思われる。やはり、どうやってもある程度の「ハルシネーション」は発生するので、事実の確認が重要だと認識した。
古墳 GIS データの集め方のまとめ
今回の「GISデータ取得法の概要とリスク・課題の一覧表」の提示をもって、この「古墳GISデータの集め方」は終了する。
基本的には目的次第だと思う。どういうデータをどのくらい集めたいのか、それによって採用する方法が違うだろう。多くの古墳データを集めてその分布を検討したい場合には、一括して取得する方法が必要となるだろうが、地域を限定して少数のデータよい場合にはひとつひとつWeb地図から人力で調べていってもそれほど負荷はかからない。
一括取得の王道はやはり古墳を管理する「地方自治体」である。かなり対応にバラツキがあるが、「直接請求」という手段も有効なのではないかと思う。
Gemniに古墳・埋蔵文化財のGISデータセットについて、自治体あるいは研究機関等に研究目的使用という条件でデータ供与依頼を行い、データが供与された事例があるか調べ、根拠資料をつけて事例を列挙せよ。調査時間内に見つからない場合には「不明」と回答せよ、と訊いてみた。すると次の答え。
Gemini Pro[強化版思考モード]の回答
ご指定の条件(検証可能な根拠資料を伴う、具体的なデータ供与事例の列挙)について調査いたしましたが、私の現在の知識ベースおよび利用可能な情報からは、特定の自治体や研究機関が研究目的の依頼に対してGISデータを供与した具体的な事例(論文名や報告書などの確実な根拠資料)を特定・検証するに至りませんでした。そのため、ご指定のルールに従い、本件に関しては「不明」と回答いたします。
補足(一般的な背景について)
学術研究の場においては、大学の研究者や大学院生が自治体の教育委員会(埋蔵文化財課など)や研究機関(奈良文化財研究所など)に対し、「埋蔵文化財データ利用申請書」や「目的外使用許可申請書」などを提出し、研究目的を条件にShapefileなどのGISデータの供与を受けるケース自体は一般的に行われています。また、それを用いた研究論文の謝辞や凡例に「〇〇市教育委員会提供のデータを使用」といった旨が記載されることも一般的です。
しかしながら、今回はそれらの具体的な論文タイトルや供与元を100%正確な根拠資料として列挙するための直接的なソース(外部の学術文献データベース等へのリアルタイムな網羅的アクセス)が制限されているため、不確実な情報の提示を避け、上記の通りの回答とさせていただきます。
なかなか立派な回答である。大学や研究機関の肩書きがあれば可能性はかなりあるに違いない。では、どこにも所属しない自称研究者や古墳愛好家の場合はどうだろう? 一度、試してみたいと思っている。

