
「古墳 GIS データの集め方(1)」で挙げた収集方法のリストには、これまで述べてきた「自治体の公開情報」以外に、国土数値情報(文化財データ)と全国古墳データベースがある。今回は、これらを使った収集の可能性について検討してみよう。
国土数値情報(文化財データ)
そもそも「国土数値情報」とは何なのか、Geminiに訊いてみたところ、次のような回答が返ってきた。
Geminiの回答
国土数値情報とは、国土交通省(国土政策局)が提供している、GIS(地理情報システム)で利用可能な日本の国土に関するデジタルデータです。地形、土地利用、道路、行政区域など多岐にわたるデータが整備されていますが、その中の一つに「文化財データ」があります。この文化財データには、国指定の史跡、名勝、天然記念物などの位置情報が含まれており、「国指定史跡」に指定されている大型の古墳群や著名な古墳のデータを抽出して利用することができます。
なるほど、収録されているのは主に「国指定史跡」に指定されているような大型の古墳群や著名な古墳に限られるようである。
これでは、「千葉県の例」でも見たように、扱える数が少なすぎる。埋蔵文化財をある程度の規模(数)で集めようという本ブログの主旨とは異なるため、これ以上の検討は見送ることにする。
全国古墳データベース(旧・前方後円墳データベース)
続いて検討するのは、奈良女子大学古代学・聖地学研究センターが提供している「全国古墳データベース」である。サイトの解説を要約すると、以下のような特徴がある。
- 対象とする古墳: 日本全国に約16万基あるとされる古墳すべてを網羅しているわけではなく、「前方後円墳」と「前方後方墳」、および国や都府県の史跡に指定されたものをはじめとする「主要な円墳・方墳等」を対象としている。
- できること: 古墳の位置、形状、出土品などの概要を検索し、地域ごとに地図上で表示することができる。
地図を表示させると、画面下部に古墳の名称、形状、所在地、規模の一覧表が表示される(図1)。この表をそのままExcel等にコピー&ペーストすれば簡単に一覧表が作れそうに見えるが、ここに大きな問題が潜んでいる。
それは、「所在地が住所表記であり、しかも番地の記載がない」という点である。そのため、ジオコーディング(住所からの座標変換)を行っても、実際の場所とはズレた位置に表示されてしまう。

一方、地図を拡大すると右側に分布表示の選択欄(図2)が現れ、10期紀年、前期、中期、後期、終末期と、時期別に古墳を出し分けられる素晴らしいスクリーニング機能を備えている。
しかし、大変惜しいことに緯度・経度の情報を表示する機能がない。古墳をクリックして詳細情報を開いても座標は載っておらず、右クリックでの取得も不可能である。

以上のことから、このデータベースから普通の方法で「古墳GISデータ」を収集するのは不可能と判断した。なお、本データベースの出典の筆頭には近藤義郎編『前方後円墳集成』(山川出版社)が挙がっており、主要なデータの多くはここから引用されているものと推測される。
そのほかの古墳データベース
その他、ネット上で利用できる主要な古墳関連のデータベースも整理しておく。
- 文化財総覧WebGIS:本ブログでもお馴染み、奈良文化財研究所が公開している地理情報システムである。全国約61万件以上という膨大な文化財(遺跡・建造物など)の位置や詳細情報が網羅されている。地図上の遺跡位置で右クリックすると、位置データ(度分秒および10進法)を取得できる。
- 古墳マップ:登録数7,096基(執筆時点)。都内在住のWebプログラマー氏によって個人運営されているサイトである。前方後円墳などが形状別にマッピングされており、クリックすると詳細情報がGoogleマップとともに表示される。位置情報は番地まで記載されているものとそうでないものが混在している。一覧の表形式出力はなく、右クリックでの緯度・経度取得もできない。
- 前方後円墳データベース検索:前方後円墳研究会が運営するデータベースで、前方後円墳(関連する帆立貝式古墳なども含む)を都府県別に5,764基収録している。位置情報は番地なしの住所表記である。詳細画面ではGoogleマップ上に位置が示されるが、こちらも右クリックでの緯度・経度取得には対応していない。
ここまでの結論
結論をまとめると、現状で最も安全・確実にGISデータを手に入れるには、「自治体が公表しているオープンデータを利用する」ということになる。
しかし残念なことに、前回述べた通りオープンデータを配布している自治体は全体のわずか28%に過ぎない。市町村レベルまで個別に探せばカバー率は上がるが、収集の手間は膨大になり、それでもデータ化されていない空白地帯は残ってしまう。これが厳しい現実である。オープン化の流れは進んでいるものの、全国が網羅されるにはまだかなりの時間がかかるだろう。
ということで、普通の方法での収集限界が見えたところで、今回の検討はここまでとする。
次回は、話題の新ツール「NotebookLM」に登場してもらい、その力を借りて「ほかにブレイクスルーとなる方法はないのか?」「その手法のメリットとリスクは何か?」について深く考えていくことにする。どうぞお楽しみに!

