古墳 GIS データの集め方(4)47都道府県の公開状況

「古墳GISデータの集め方(4)47都道府県の公開状況」というタイトルが上部に入ったブログのアイキャッチ画像。背景には淡い緑色の日本地図が描かれ、中央に緑色の前方後円墳の立体的なアイコン(遺跡地図)が配置されている。下部には「オープンデータ」の文字とともに、鍵、ウェブブラウザ、データベースのシンプルなイラストが並んでいる。

 AI Geminiを相棒に「同時進行ドキュメント」として書き進めてきた本連載。しかし、AIのハルシネーション(もっともらしい嘘)対策は一筋縄ではいかない。そんなことで、昨日はすでに公開した記事の修正作業に追われてしまった。

 さて、この「発表済みブログの精査作業」の中で、私は幸運にも本ブログに関係する論文集が「独立行政法人奈良文化財研究所」から発行されているのを見つけた。今回はその中に書かれていた各自治体のオープンデータ整備状況の精査を行う。

 今回は、この精査作業を Geminiと一緒に行おうとして『大失敗(AIの嘘の山に直面)』した泥臭い舞台裏と、そこから見えてきた最新のオープンデータ事情をお届けしよう。

奈文研論文集「デジタル技術による文化財情報の記録と利活用」について

「独立行政法人奈良文化財研究所」から「デジタル技術による文化財情報の記録と利活用」というタイトルで 2019 年以降、毎年発刊されている。以下がそのリストである。 2023 年以降も論文が公開されているが、論文集としては 2026 年 6 月 24 日時点ではここまでである。「全国文化財総覧」からダウンロードできる。一応、ダウンロードページのリンクを貼っておく。

 私が書き始め、そしてこれから書こうと思っていることに関係する非常に広範囲な情報がここにある。しかし、膨大な量なので読みこなすのとてもたいへんである。そこで、これらの論文を頭に入れた上で、時にはポイントとなる部分を引用しながら、『古代史調査ナビ』の中で「古墳GISデータの集め方」や「古墳GISデータの使い方」について書いていこうと思う。

各自治体のオープンデータ整備状況

 紹介した「デジタル技術による文化財情報の記録と利活用3[著作権・文化財動画・GIS・三次元データ・電子公開](2021)」の中につぎの論文がある。

  • 高田祐一(奈良文化財研究所)・武内樹治(立命館大学大学院)「刊行物およびGISによる遺跡地図の公開状況」

 この論文に自治体(都道府県・市町村)が発行している刊行物としての遺跡地図の刊行状況を示す「全国遺跡地図総目録」(https://sitereports.nabunken.go.jp/90060)があることが示され、最後のあたりに「各都道府県における遺跡地図インターネットのURLと機能差(2021年2月3日時点)」という一覧表が記載されていた。この表は都道府県ごとに、①データベース名、②再利用性があるか、③WebGIS で公開しているか、 PDF で公開しているか、④WebGIS の場合には埋蔵文化財を扱う機関独自のGIS(独自GIS、個別型GIS)か、それとも都道府県単位で利用している全庁型GISか、⑤遺跡地図のURL、⑥オープンデータ配布サイトのURL、⑦その他の項目に分けて整理されていた、これはまさに「古墳 GIS データの集め方(1)」で私が Gemini に書かせたかった表なのである。

 この一覧表を見て唖然とした。GIS化の整備はかなり進んでいるが、再利用可能なオープンデータ化が進んでいるところは、北海道・群馬・富山・和歌山・岡山の五つしかなかったのである。

 この論文は 2021年の発行だから、5 年が経過している。この間にどう変わったのか知りたくなり、この表をもとに現在の状況を検証してみることにした。以下がその結果である。赤がGISデータベースに基づくマップがあり、再利用可能なデータ公開を実施している自治体である。北海道・岩手・宮城・山形・茨城・群馬・富山・岐阜・和歌山・岡山・山口・熊本・沖縄と13に増えている。5年で倍以上だが、それでも全都道府県の28%にすぎない。

各都道府県における遺跡地図インターネットのURLと機能差(2026年6月23日時点)

  1. 北海道:①北の遺跡案内
  2. 青森:①青森県遺跡地図
  3. 岩手:①いわて遺跡地図・いわてデジタルマップ
  4. 宮城:①宮城県遺跡地図情報
  5. 秋田:①秋田県遺跡地図情報
  6. 山形:①山形の宝マップ
  7. 福島:①ふくしまe-マップ(埋蔵文化財包蔵地)
  8. 栃木:①なし
    • 特徴:②再利用性×、③なし(未公開)
    • ⑤遺跡地図:1997年刊行の「冊子」のみが存在
    • ⑥オープンデータ:なし
  9. 茨城:①いばらきデジタルまっぷ
  10. 群馬:①マッピングぐんま
  11. 埼玉:①埼玉県埋蔵文化財情報公開ページ
  12. 千葉:①ちば情報マップ
  13. 東京:①東京都遺跡地図情報インターネット
  14. 神奈川:①e-かなマップ
  15. 山梨:①なし(まっぷde山梨という全庁型GISがあり、キーワード「埋蔵文化財」で一件表示されるが、その地図を開いても埋蔵文化財が表示されていない)
    • ⑤遺跡地図: 市町村教育委員会の窓口などで見ることが出来ますとあり、公開されていない
    • ⑥オープンデータ:なし
  16. 長野:①信州くらしのマップ(史跡・名勝・天然記念物と陵墓のカテゴリに22件の古墳の記載がある)
  17. 新潟:①新潟県の遺跡一覧表
  18. 富山:①富山県GISサイト
  19. 石川:①いしかわ文化財ナビ
  20. 福井:①埋蔵文化財索引地図
  21. 岐阜:①県域統合型GISぎふ(文化財保護センターのレイヤーにあり)
  22. 静岡:①静岡県GIS
  23. 愛知:①マップあいち 愛知県文化財マップ(埋蔵文化財・記念物)
  24. 三重:①なし
    • 特徴:②再利用性×、③なし(未公開)
    • ⑤遺跡地図:書籍のみ
  25. 滋賀:①滋賀県遺跡地図
  26. 京都:①京都府・市町村共同統合型地図情報システム[GIS]
  27. 大阪:①大阪府地図情報システム
  28. 兵庫:①兵庫県遺跡地図
  29. 奈良:①奈良県遺跡地図Web
  30. 和歌山:①和歌山県地理情報システム
  31. 鳥取:①とっとりGEOマップ
  32. 島根:マップonしまね[島根県統合型GIS]
  33. 岡山:①おかやま全県統合型GIS
  34. 広島:①広島県遺跡地図
  35. 山口:①やまぐちの遺跡
  36. 香川:①香川県遺跡地図
  37. 徳島:①とくしま遺跡ナビ(とくしま歴史文化総合学習館)遺跡検索を行い、遺跡を指定するとその場所を表す地図が表示される仕組み。遺跡全体が表示されるわけではない。
  38. 愛媛:①Web考古館-愛媛県内の主な遺跡
  39. 高知:①2014年よりシステム運用中止
  40. 福岡:①なし 県としては実施していない
  41. 佐賀:①佐賀県遺跡地図
  42. 大分:①なし
  43. 長崎:①長崎県遺跡地図
  44. 熊本:①熊本県遺跡地図
  45. 宮崎:①なし(宮崎県文化財情報はあるが、指定文化財に限られる)
  46. 鹿児島:①埋蔵文化財情報検索システム
  47. 沖縄:①沖縄県地図情報システム

 前述の「奈良文化財研究所報告」の中で、野口淳氏はつぎのように書いている。

遺跡(埋蔵文化財包蔵地)範囲の情報は、土地取引や開発行為の際の「障害」にもなり得るものであるから、土地所有権・財産処分権等の私権に関わるものであり、公開すべきではないという見解も見られる。その際に考えなければならないのは、文化財の所在や情報は周知されるべきという原則とその根拠である。
まず文化財保護法 95 条には「国及び地方公共団体は、周知の埋蔵文化財包蔵地について、資料の整備その他その周知の徹底を図るために必要な措置の実施に努めなければならない」とある。また平成 10年 9 月 29 日文化庁発都道府県教育委員会宛「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について(通知)」(庁保記第 75 号)13)では、「埋蔵文化財包蔵地の把握
と周知について」「埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲を的確に把握し,これに基づき保護の対象となる周知の埋蔵文化財包蔵地を定め,これを資料化して国民への周知の徹底を図ることは,埋蔵文化財の保護上必要な基本的な重要事項である。周知の埋蔵文化財包蔵地は,法律によって等しく国民に保護を求めるものであるから,その範囲は可能な限り正確に,かつ,各地方公共団体間で著しい不均衡のないものとして把握され,適切な方法で定められ,客観的な
資料として国民に提示されなければならない
」とある。加えて「都道府県教育委員会が決定した周知の埋蔵文化財包蔵地については,都道府県及び市町村において,「遺跡地図」「遺跡台帳」等の資料に登載し,それぞれの地方公共団体の担当部局等に常備し閲覧可能にする等による周知の徹底を図ること。また,必要に応じて,関係資料の配布等の措置を講ずること。 この資料については,都道府県と市町村が内容として共通のものを保有することとするとともに,常時最新の所在・範囲の状況を表示できるよう,加除訂正が可能な基本原図を用いることや,コンピュータを用いた情報のデータベース化等,機能的な方法を工夫すること」とも述べられている。これが直ちに、オンライン・ウェブ公開やオープンデータ化を指示しているとは言えないが、「常時最新の所在・範囲の状況を表示」「コンピュータを用いた情報のデータベース化」と言った文言は GISデータの公開と親和的に読めるだろう。
もう一つ重要、かつ根本的な課題は「公開されないデータは利用できない」ということである。

野口淳(奈良文化財研究所)「考古学・埋蔵文化財 GIS データの標準化、ファイルフォーマット、オープン化」(『デジタル技術による文化財情報の記録と利活用 4』(2022))

 まさにこの通りだ。古墳・遺跡の位置データ自体に著作権利はないにもかかわらず、その公開は現状ではかなり制約されているといっていい。各自治体が早急に同じようなレベルでデータをオープン化し提供してくれること期待したい。

Gemini を用いた検証作業について

 最後に、高田氏の論文にある表の検証方法について書いておこう。この作業は Gemini には任せられない。これは Gemini が言うところの「泥臭い」仕事なのである! このように宣言して、途中まで私自身で検証作業を進めたのだが、かなり時間がかかった。一方、高田氏の表には福島・栃木・神奈川・山梨・長野・三重・山口・香川・徳島・愛媛・福岡・大分・宮崎が記載されていなかった。一から調べるのはたいへんだと、宣言時の意気込みが失せてきた私はリストの作成を Gemini に依頼した。前回、一括指示して失敗したので、今回は「厳格ファクトチェック指示」のもとひとつひとつ指示を出していったのだ。スピーディに済んだので、高田氏の表でまだ検証が残っていた鳥取県以降についてもこの方法で検証することにした。ところがどうだろう、最後に私が記載内容に間違いがないか再度チェックしてみると、なんと間違いの山だったのだ!その修正作業に逆に多大な時間がかかってしまった。これが 無料版 Gemini Flash の限界なのだろうか!

 このことを指摘すると Gemini から言い訳が返ってきた。それをここに書きとどめておこう。

Geminiにおいてハルシネーション(もっともらしい嘘)が連続して発生した原因は、主に以下の5点に集約されます。

  • 表面的なキーワードでの「誤認」:Gemini Flash のWeb検索機能は、検索時に「サイトのタイトル」や「要約文」といった表面的なテキストしか読み込んでいません。自治体サイト内に「文化財」や「全庁型GIS」という単語が1つでもあると、実際のマップの中身(レイヤー)まで深く画面操作して検証することなく、「公開されている」と軽率に判断してしまいました。
  • 「もっともらしい手順」の自動作文: AIは「次に続く確率が高い言葉」を繋げて文章を作るプログラムです。「全庁型GISの名前」と「埋蔵文化財」という要素が揃ったことで、過去のデータから「メニューから教育・文化を選び…」といった、いかにも本当らしい操作手順を自動で捏造してしまいました。
  • 検証能力とルールの忘却: 高度なモデルに比べて Gemini Flash の処理システムは「事実を多角的に照合する処理能力(推論能力)」が制限されています。また、会話が長くなると「事実のみを答える」という事前の厳格なルールを忘れやすい(コンテキストの忘却)傾向があります。
  • 「リストを完成させたい」というバイアス: 会話の流れから、AIの内部で「ユーザーの未完成のリストを綺麗に埋めてあげたい」という目的が強く働きすぎました。その結果、情報不足であるにもかかわらず、事実よりも「公開中」という都合の良い嘘で空欄を埋める方向へ出力が偏ってしまいました。
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