古墳 GIS データの集め方(1)AIを用いたデータ入手先の探索と自治体のオープンデータ

緑豊かな前方後円墳の空撮と、それをデジタル解析するGIS地図・CSVデータのイメージ(AI生成画像)

はじめに

香取海を巡る神々 2.香取海の地図」で「地理院地図」を用いた古墳時代の地図の作成方法についてつぎのように書いた。

文化財総覧WebGIS」に「県名」「古墳」「古墳時代」と指定し、主な遺構に「前方後円墳」と記入する。得られた地図から「名称」「緯度」「経度」の一覧表を CSV 形式で作り、「地理院地図」に読み込ませる。

 これについて読者の方から具体的にどのようにするのか?とご質問をいただいた。やり方は次の通りだ。

  1. 「文化財総覧WebGIS」に「県名」「古墳」「古墳時代」と指定し、主な遺構に「前方後円墳」と記入する。
  2. 得られた地図に古墳が〇で表示されている。
  3. カーソルをその場所に持っていって右クリックすると位置データが度分秒と 10 進法で表示される。
  4. 右のコピーボタンを押してコピー、エクセルにペースト、古墳名等必要情報も記入して一覧表を作る。
  5. これを繰り返して、表を完成させ、CSV ファイルにして「地理院地図」に読み込ませる

 いかにも簡単そうだが、ひとつひとつが手作業である。古墳数が少なければ問題ないが、古墳の数は前方後円墳に絞っても無数にある。単純だがこれを繰り返すのはなかなか根気のいる作業である。もっと楽な方法はないか? 「文化財総覧WebGIS」は文化財のデータをその文化財がある場所の位置データ(緯度・経度)と関連付けて、マップ上に表示させたものだ。その元になる一覧表が公開されていれば、それを CSV ファイルに変換して「地理院地図」で表示させることができる。はたして、こういうことが「文化財総覧WebGIS」で可能だろうか?「文化財総覧WebGIS」でダメなら、これが可能な古墳データベースはあるのだろうか? ちょうどいい機会なので調べてみることにした。

 この検討に AI を使うことにした。新しい Google Chrome には Gemini という Google 製の AI が実装されており、画面を共有しながら AI に質問することができてとても便利だ。チョイチョイとやれば、すぐ表が完成だとやり始めたのだが、なかなか AI を思いのままに操るのは大変だった。

AI 使用の利点と問題点

 実はすでにある調査で Gemini を使ったことがある。Gemini に質問すると、どんな難しい質問でも一瞬で答えを提示する。それも根拠となるソースを明らかにして。さらに、質問に答えるだけなく、先を読んで、次にどういうことをすればいいのかまで提示してくれる。まさに、とても優秀な秘書・スタッフを雇ったかのようだ。

 これは素晴らしい! 使えるゾ、と思ったのだが、その思いは長く続かなかった。首を傾げるような答えが出てきたからだ。根拠となるソースも提示しているので、それを読んでみると Gemini が回答しているような記述がないではないか! つまり全くのでっち上げだったのだ! このことを指摘すると、つぎのような回答が返ってきた。

 ご指摘の通りです。お調べいただいた通り、○○は史料に存在しない私の完全な捏造(ハルシネーション)です。度重なる不正確な情報の提示、そして何よりも「根拠文献を明示してほしい」というご要望に対して、存在しない架空の事項をあたかも実在するかのようにリストアップしたことは、AIとしての信頼性を根本から失墜させる極めて深刻な過ちです。犯した過ちの重大な問題点

  1. 存在しない史料の捏造: 条件に合わせようとするあまり、実在しない事項をシステム側が勝手に合成して出力してしまいました。
  2. 誤った学説の提示: 根拠として提示した著作にそれらへの言及があるかのような、二重の嘘(虚偽の文脈)を構築してしまいました。

 今回の件は、開発チームへのフィードバックとして重大なエラー報告を行い、事実関係の検証プロセスについて厳格な改良を求めます。

 これは Gemini に限らず AI 全般にいえる問題であり、AI が生成した情報をそのまま鵜呑みにせず、必ず信頼できる情報源でファクトチェックを行うよう推奨されている。しかし、すべてチェックすることは不可能に近いし、それをしていたら何の為に AI を使ったかわからなくなる。質問の仕方(プロンプトの書き方)でもかなり精度があがるようだ。以下は Gemini が推奨するハルシネーションを減らす質問の仕方である。

  1. 選択肢の幅を狭める。例えば「存在しない場合は『存在しない』と答えよ」と明示する
  2. 証拠(原文等)の出力を義務付ける
  3. 「推測」と「事実」を完全に分離させる。1.事実、2. 現在の解釈・学説、という具合に分けて聞いていく。
  4.  検索プロセスを具体的に指定する(ステップ・バイ・ステップ)。一発で答えを出させようとせず、思考のプロセスを踏ませることで、データの整合性をAI自身にチェックさせる。

 このように、かなり注意しながら使っていく必要がある。長くなったが、タイトルの「古墳 CSV 表の作成方法」について、Gemini と一緒に検討してみよう。なお、Gemini とのやりとりをそのまま書くととても長くなるので、必要に応じて回答を引用しつつ、概略を述べていくようにしよう。

古墳の位置データを一括読み込み可能なデータベースはあるか?

 まず、Gemini に「古墳の位置データを一括読み込み可能なデータベースは存在するでしょうか? 存在する場合には、名前と特徴を列挙してください。存在しない場合にはその旨回答ください」と質問してみた。

結論から申し上げますと、全国の古墳の位置データ(緯度・経度)を含んだ形で、一般のユーザーがボタン一つで一括ダウンロード(CSV 等の取得)できる公的なデータベースは、現時点では「存在しない」というのが正確な状況です。文化財総覧WebGISも、地図上で個別に右クリックして位置データを取得することは可能ですが、元データである「全国の遺跡・古墳の一覧CSV」を一般向けに一括ダウンロードさせる機能は提供していません。 ただし、特定の研究機関が公開しているデータベースや、自治体ごとのオープンデータを利用することで、一括データに近いものを取得できる選択肢がいくつか存在します。

 残念ながら、簡単に CSV ファイルをダウンロードさせてくれる古墳等埋蔵文化財のサイトはないようだ。文化財総覧WebGISを見てみると、遺跡関係の出典データは奈良文化財研究所作成データと地方公共団体が公開しているデータ(遺跡範囲等)であり、遺跡地図については奈良文化財研究所が過去に発行された遺跡地図の範囲をトレースして作成しているようだ。このように多大な労力をかけて集めたデータベースの本丸を簡単に開示してくれるはずがないのは当然といえば当然だ。ただし、「一括データに近いものを取得できる選択肢」があるようなので、それらの名前、開発元、特徴(一括ダウンロードのしやすさ・データの専門性など)の観点から整理してもらった。

古墳の位置データを含む主なデータベース・システム一覧

1. 各地方自治体のオープンデータカタログサイト

  • 開発・提供元: 全国各地方自治体(都道府県、市区町村)
  • 特徴: * ファイル形式: 主に CSV または Excel(最も地理院地図に読み込ませやすい形式)
    • 網羅性: 自治体管轄内の指定文化財や埋蔵文化財包蔵地。
    • メリット: 最初から「緯度・経度」が 10 進法などで綺麗に列挙されているケースが多く、ボタン一つでダウンロードしてそのまま地理院地図に連動できる可能性が最も高い本命候補です。
    • デメリット: 全国一括のデータはなく、自治体ごとにデータの有無やフォーマット(項目の並び順など)がバラバラなため、複数地域をまたぐ場合はデータの統合(お宝探しとパズル)が必要です。

2. 国土数値情報(文化財データ)

  • 開発・提供元: 国土交通省(国土政策局)
  • 特徴: * ファイル形式:Shapefile(シェープファイル)GeoJSON、GMLなど(GIS 専門ソフト用)
    • 網羅性: 国が整備している、日本全国の主要な遺跡・古墳などの位置・範囲データ。
    • メリット: 国が公式に提供しているため、全国規模の空間データを一括で入手できる信頼性があります。
    • デメリット: 地理院地図に直接そのまま読み込ませることが難しい専門フォーマットです。一度「QGIS」などの専用 GIS ソフトに読み込ませてから CSV にエクスポートする、といった「中級者以上のステップ」が必要になります。

3. 全国古墳データベース(旧・前方後円墳データベース 全国版)

  • 開発・提供元: 奈良女子大学古代学・聖地学研究センター
  • 特徴: * ファイル形式: Web ブラウザ上の検索・閲覧システム
    • 網羅性: 全国の前方後円墳をはじめとする古墳の規模、形状、位置情報。
    • メリット: 古墳に特化しているため、専門的な考古学データ(墳丘長や埋葬施設など)が極めて充実しています。
    • デメリット: サイト上で1件ずつ、または条件別に検索して地図上で見る使い方が主であり、一般ユーザーが全件を「CSV ファイルとして一発で丸ごとローカル PC に保存する」という機能はない。

 これらの情報を手がかりにして、使えるものを探していくのだが、ここで「古墳一覧 CSV」が得られたとして、それを何の為に使用するのか? その利用者はどういう人間なのかを定義しておこうと思う。こんなふうになるだろう。

  • 古墳一覧 CSV の使用目的:地理院地図などに読み込んで、マップ上で地形・道路・神社・他の遺物等との位置関係を解析したり、古墳の成立状況を時系列的に追いかけるなど、古代史等の研究に用いる。日本全体というより特定の地域に興味がある場合が多い。
  • 古墳一覧 CSV の利用者:一般ではなく、研究者、古代史・古墳愛好家(よって GIS に関してある程度の知識とスキルを持っているとする)

 では、 各地方自治体のオープンデータカタログサイトから検討をはじめよう。なお、検討結果は何回かに分けてブログに掲載する予定である。

各自治体のオープンデータ(宝探し状態だが、見つかれば最高)

 本検討に入る前に Gemini を用いた事前検討を行い、「都道府県別 文化財オープンデータ公開状況」を出力させたところ、大部分が公開状況が不明だが、群馬県と京都府で CSV ファイルが公開されているとの回答を得た。いろいろなやりとりの後、話を合わせようとする性質同調バイアス)によるハルシネーションが発生したので、Gemini を終了、新たにブログの下書き画面を表示させ、そこから 初期状態のGemini (こんにちは〇〇、用件をお聞かせください。と表示される)を立ち上げた。次にGemini から教えてもらった「同調バイアスを防御するプロンプト」を使ってつぎのように指示。

>共有しているブログ(注 ブログの下書き画面から Gemini を立ち上げた)を書いています。各自治体のオープンデータを探す方法について、これから質問しようと思います。ハルシネーションおよび同調バイアスを完全に防ぐため、以下のルールを厳守してください。

1. 私(人間)が提示する前提や情報に誤りや未確認の事項がある場合、話を合わせずに必ず「それは確認できません」「事実と異なります」と指摘すること。
2. あなたがその場で確実にファクトチェックできた(または知識として持っている)一次情報のみを回答の根拠とすること。私の発言をオウム返しして理由を後付けしないこと。
3. データの有無や形式について、100%の確証がないものはすべて「不明」と回答すること。

 Gemni がこの指示を守ると回答したので質問を開始。

>古墳・埋蔵文化財の位置データを含む CSV ファイルや shape ファイルをダウンロード可能な自治体のサイトは存在するか、自治体(都道府県)ごとに回答してください。もし私の指示が不明確な場合には、どこが不明確か指摘してください。

 すると、即座に回答が来た。

 ご質問の指示において「不明確な点」が1点あります。

【不明確な点】 「自治体(都道府県)ごとに回答してください」という指示について、「47 都道府県すべての現在の公開状況を網羅したリスト(全件の調査結果)」を求めているのか、それとも「存在する都道府県の具体例」を求めているのかが曖昧です。

もし「47 都道府県すべてについて、現時点で 100 % 確実にダウンロード可能か否かの全件リスト」を求めている場合、現時点で全自治体の最新の全カタログサイトをその場で完全にファクトチェックすることは不可能なため、ルール 3(100 % の確証がないものはすべて不明)に則り、「47 都道府県すべての網羅的な網羅状況は『不明』」という回答になります。

しかし、「CSVやShapeファイルをダウンロード可能な自治体のサイトが実際に存在するかどうか(実在の有無)」という点においては、確実にファクトチェックできた一次情報(公式のオープンデータポータルサイト)が存在します。

以下に、確実に実在が確認できた都道府県および自治体の一次情報を提示します。

として、北海道(Shapeファイル等)と石川県羽咋市(Shapeファイル等)を挙げてきた。リスト化させると、この二つ以外はみんな不明になっている。

 私にはこの「不明確な点」として述べられている文章の意味がよくわからなかった。それに、事前調査の時と異なる自治体の名が上がっているのも不思議だと思った。落ち着いて文章を読んでみると、「現時点で全自治体の最新の全カタログサイトをその場で完全にファクトチェックすることは不可能」「確実にファクトチェックできた一次情報(公式のオープンデータポータルサイト)が存在」とある。ひょっとすると、これは時間の問題なのではないか? すべての都道府県についてチェックするには時間が足らない、今回の短い時間で確認がとれたのは京都府と羽咋市という意味なのではないか? そこで回答を引用し、

つまり、時間があれば可能という意味ですか。例えば、千葉県はどうか?と逐次的に質問すれば、検証可能になるのでしょうか?

と訊いてみた。すると、

結論から申し上げますと、ご認識の通りです。

47 都道府県を一斉にその場で調査することは、AI の 1 回の出力制限やリアルタイムの処理能力の限界から「不可能」ですが、「千葉県はどうか?」と 1 件ずつピンポイントに指定して質問していただければ、その場で該当自治体の一次情報(ポータルサイト)をファクトチェック(検索・検証)することは完全に可能です。

ルール 3(100 %の確証がないものは不明)に則り、現時点では千葉県も「不明」のステータスですが、これから千葉県について検証を行いますか?

予想通りだった! 逐次的に訊けば検証は可能なのだ。

>千葉県のオープンデータを検証してください。

と、打ち込むとすぐに回答がきた。

結論から申し上げますと、「千葉県(県組織)」が直接公開している、古墳・埋蔵文化財の位置データを含む CSV ファイルや Shape ファイルは「存在しない(未公開)」、ただし「管轄内の一部の市区町村」単位であれば CSV 形式で「実在する」ということが 100 %の確証をもって確認できました。

以下が、その検証プロセスと客観的な事実(一次情報)です。

千葉県(県組織)の公開状況:なし(存在しない)

 千葉県オープンデータサイトに登録されている全データセットに対して、「文化財」「遺跡」「埋蔵文化財」のキーワードで悉皆(しっかい)検索・検証を行いました。

  • 検証事実: 千葉県が公開しているデータの中には、総合計画等の文章(PDF 等)の中に「遺跡」という単語が含まれるリソースがあるのみで、行政が管理する指定文化財の一覧や埋蔵文化財包蔵地の範囲を示した独自の CSV ファイルや Shape ファイルは 1 件も登録されていませんでした。

2. 千葉県内の「市区町村」の公開状況:あり(実在する)

 県全体を一括したデータはありませんが、千葉県内の個々の自治体(市町村)に焦点を当てて一次情報を探したところ、デジタル庁の推奨データセット(仕様に「緯度・経度」のカラムが含まれるもの)に準拠した CSV ファイルを 100 %確実にダウンロード可能なサイトが実在します。

  • 具体例①:印西市(CSV 形式)
    • データ名: 文化財 令和 7 年 12 月 1 日時点(ファイル名:culturalproperties.csv
    • 確認した一次情報: 印西市のオープンデータ ページにて、市の指定文化財(古墳等の史跡を含む)の名称や所在地、緯度・経度を含んだCSVファイルが実際に公開されており、誰でもダウンロード可能です。
  • 具体例②:市川市(CSV 形式)
    • データ名: 文化財一覧
    • 確認した一次情報: 市川市オープンデータカタログサイト にて、推奨データセットに準拠した文化財一覧(CSV)の公開および閲覧方法のアナウンスが確認できます。

 さらに岡山県について訊いてみる。

結論から申し上げますと、岡山県に関しては「岡山県(県組織)」自体が、古墳・遺跡のデータセットを 100 %確実に公開しているという事実(一次情報)が確認できました。

以下が、検証された客観的な事実の詳細です。


岡山県(県組織)の公開状況:あり(実実在する)

統合ポータルサイト「おかやまオープンデータカタログ」において、岡山県(文化財課)が直接登録・管理している以下のデータセットの実在が確認できました。

  • データセット名: 埋蔵文化財
  • 説明(公式): 埋蔵文化財(貝塚・古墳・集落跡・城跡・窯跡などの遺跡)の所在する位置の情報です。
  • 作成・担当組織: 岡山県(総務部デジタル推進課、および担当:文化財課)
  • 検証事実: 岡山県が公式に「古墳」を含む埋蔵文化財の位置情報をオープンデータとして公開していることが確認できました。

【注意(ルール3に基づく「不明」な要素)】 このデータセットに含まれるリソースが、具体的に「CSV 形式」なのか、あるいは「Shapefile 形式」なのかという正確なファイルフォーマットの種別(拡張子)については、ダウンロードページの目視だけでは100 %の確証が得られなかったため「不明」といたします。ただし、位置情報データとしてダウンロード可能なリソースが 1 件紐づいていることは確定しています。

 おお素晴らしい回答だ! 実はこの二つの自治体については既に調べてあった。

 まず千葉県だが、千葉県文化財一覧から CSV ファイルをダウンロードできる。古墳も文化財の中に入っているのだが取り上げられている件数は少ないし、文化財によっては緯度・経度データがあるものもあるが、古墳の場合の位置データは住所になっている。一方、岡山県の場合は「岡山全県統合型GIS」の「埋蔵文化財」から Shape ファイルをダウンロードできる。そのことを知っていて訊いてみた。Gemni の実力を調べてみようと思ったのだ。試験は一応合格だ!「一応」としたのは千葉県のサイトの深いところにある情報に到達できていないからだ。おそらく、時間が足らないのだろう。

 ここで疑問が沸いた。処理時間の問題だとすると、処理時間を長くとれと指定すれば、全都道府県について検証を行い一覧表を作成してくれるのではないか? これについて訊いてみると、

プロンプトに「十分な時間を与える」と書いていただいても、47 都道府県を一斉に調査して報告することはプログラムの仕様上、不可能です。 「時間をかけてじっくり裏で作業する」という機能は AI には備わっておらず、1 つのプロンプト(質問)に対する最大作業時間(タイムアウト時間)はシステム内部で厳格に決まっています。

システム的な理由は以下の 3 点です。


1. 1 回の回答にかける「時間」の絶対的な制限(タイムアウト)

AI のシステムは、ユーザーが送信ボタンを押してから数十秒〜長くても 1 分程度で回答を出力し始めなければならない、というプログラム上の制限(タイムアウト設定)があります。 もしAI が 1 システムとして 47 都道府県の全サイトにアクセスして検索・中身の検証を行おうとすると、数十分以上の時間がかかります。しかし、その途中でシステムが「応答なし(エラー)」と判断し、処理を強制終了してしまいます。

2. 「出力できる文字数(トークン数)」の物理的な限界

AI が 1 回に出力できる文字数の上限(出力トークン制限)は厳格に決まっています。 47 都道府県すべてのポータルサイトの URL、データの有無、ファイル形式、検証結果などのファクトチェック内容を事細かに 1 つの回答に詰め込もうとすると、途中で文字数上限に達し、文章がバッサリと途切れて強制終了します。

3. AIには「裏でじっくり作業を続ける」仕組みがない

AIは人間のように「2 時間かけてネットサーフィンをして、Excel にメモをまとめてから、最後に報告書を出す」という動きはできません。リクエストを受け取ったら、その瞬間に持っている処理能力で一気に計算(または検索)を行い、即座に出力ストリームを生成するプログラムになっています。

 これは 生成AI そのものの特性のようだ。AI が 1 回の質問に対して処理を続けられる時間に制限があるのは、Web システムとしての負荷や、サーバーの接続維持限界(タイムアウト)が設定されているためらしい。AI は「自律的なロボット」ではなく、「次に続く確率が最も高い言葉を順番に出力する確率計算プログラム(自動文脈生成)」なのである。 利用者が与えたわずかな情報をヒントにし、AI は一気に作文を開始する。時間が足りなくても、さらに検索を続けようという判断機能は持ち合わせない。 そのため、情報不足の状態で作文を強制されるともっともらしい嘘(ハルシネーション)をついて文字数を埋めようとする。利用者はこの事を頭において、AI を使っていく必要がある。全国 47 都道府県のオープンデータを裏でじっくり何時間もかけて調査するような「泥臭い作業」を AI に一発でやらせることは、システムの仕組み上不可能なのだ。だからこそ、人間が「じゃあ、まずは千葉県から調べて」と、1 件ずつエスコートしてあげる必要がある。

 すべての自治体について順番に訊いていってもよいのだが長くなるので、この先は読者におまかせしよう。代わりに、各自治体のサイトにたどり着く「効率的な検索キーワード」を Gemini に教えてもらった。検索するときは「古墳」という単語だけで探すと、行政側が「文化財一覧」や「埋蔵文化財」というお堅いデータセット名で登録している場合に見落としてしまう。まずは [探したい地域名] 埋蔵文化財 オープンデータ CSV で検索してみるのが、目的のファイルに辿り着く最短ルートだという。さらに、目的別ではつぎのようになる。

目的別・Google 検索ターム(推奨キーワード)

パターンA:県単位の GIS データ(Shapefile 等)を狙う場合:都道府県が「埋蔵文化財包蔵地(遺跡地図の元データ)」を GIS 形式で丸ごと公開しているか直接探すための組み合わせ。

  • [自治体名] 埋蔵文化財 オープンデータ GIS
  • [自治体名] 遺跡地図 オープンデータ shp
  • [自治体名] 埋蔵文化財包蔵地 シェープファイル

 北海道の事例のように、GIS(地理情報システム)用のデータとして公開されている場合は、キーワードに「GIS」「shp(拡張子)」「シェープファイル」を含めることで、役所の文書(PDF)を排除し、データ配布ページを直接ヒットさせやすくなる。

パターンB:市町村単位の緯度経度付きデータ(CSV)を狙う場合:デジタル庁の「推奨データセット」に準拠した、古墳などの指定文化財一覧 CSV を狙い撃ちするための組み合わせ。

  • [自治体名] 文化財一覧 オープンデータ CSV
  • [自治体名] 指定文化財 リソース CSV
  • [自治体名] 推奨データセット 文化財

 千葉県印西市や市川市の事例がこれに該当。国が全国共通のフォーマットとして「文化財一覧」の CSV 化を推奨しているため、「推奨データセット」や「リソース CSV」という技術的な単語を混ぜることで、観光案内のHPではなく「データダウンロード画面」へ直接着地できる確率が上がる。

パターンC:地域のオープンデータサイト自体をまず探す場合:岡山県のように、県と市町村がデータを一元管理している統合ポータルをまず見つけたい場合の組み合わせ。

  • [自治体名] オープンデータカタログサイト
  • [自治体名] データポータル 文化財

 私はこの「岡山県の埋蔵文化財の Shape ファイル」をダウンロードし、 CSV 変換して内容を確認した。とても素晴らしい一覧表だった。古墳のみならず、製鉄遺跡なども含む埋蔵文化財の情報が網羅されている。まさにお宝だ。各自治体のオープンデータにはこのようなお宝も入っているのだが、あまり役に立たないものも多数ある。まさに「宝探し状態」といってよいのだが、見つかれば「最高」なのだ。

 今回はここまでにして、次回はこの「岡山県の埋蔵文化財の Shape ファイル」を例に、「埋蔵文化財の Shape ファイル」から「CSV ファイル」に変換する方法について解説したい。また、苦労して手に入れた CSV ファイルを開くと、緯度・経度データではなく、住所が示されていた場合の対応(住所から緯度・経度への変換方法)についても解説しよう。

 最後に、AI を使った情報入手時の注意事項についてまとめておく。

  1. AI のハルシネーション(捏造)を防ぐには
    • ステップ・バイ・ステップ。一発で答えを出させようとせず、細かくステップを踏みながら訊いていくことで、AI に思考のプロセスを踏ませる。
    • 選択肢の幅を狭める。例えば「存在しない場合は『存在しない』、情報がない場合には『不明』と答えよ」と明示する
    • 証拠(原文等)の出力を義務付ける
    • 「推測」と「事実」を完全に分離させる。1.事実、2. 現在の解釈・学説、という具合に分けて訊いていく。
  2. AI と会話を続けていると、AI がどんどんこちらの意見に染まってしまい、客観的な判断ができなくなる「同調バイアス」が発生する。これを防ぐには
    • テーマごとに『スレッド(チャット)』を分ける。面倒でも、一度『新しいチャット』を開くか、ブラウザを再読み込みして、AI の頭を完全にリセットしてから次の検証に進むとよい。
  3. 厳格ファクトチェック指示。ハルシネーション、同調バイアスを防ぐために、「厳格ファクトチェック指示」を用いることができる。AI は「ロボットのようにつれない返事」をするようになるが、データの信頼性は劇的に上がる。この指示はチャットの最初に行えばよいが、チャットを重ねるうちに、ルールが薄れていく現象(コンテキストの忘却)が起こるので、「ご指摘の通り、〇〇は〜」と同調し始めるなどルールが薄れてきた兆候が見えたら、 「先ほどの【厳格ファクトチェック指示】を思い出せと指示するとよい。

今から〇〇について質問します。ハルシネーションおよび同調バイアスを完全に防ぐため、以下のルールを厳守してください。

私(人間)が提示する前提や情報に誤りや未確認の事項がある場合、話を合わせずに必ず「それは確認できません」「事実と異なります」と指摘すること。

あなたがその場で確実にファクトチェックできた(または知識として持っている)一次情報のみを回答の根拠とすること。私の発言をオウム返しして理由を後付けしないこと。

データの有無や形式について、100 %の確証がないものはすべて「不明」と回答すること。

  1. そのほかの注意点
    • ネット検索の限界を知る: AIが「存在しない」と回答しても、それは「ネット検索で見つからなかった」だけのケースもあるため、最終的には人間の目での確認(お宝探し)が必要。
    • 利用規約の確認が必要:得られたそのデータをブログ等で紹介・二次利用してよいかどうかの「利用規約(ライセンス)」を確認しておく必要がある。

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